こんにちは!お魚大好き女子大生の鈴木ひらです。
みなさん、タラバガニはお好きですか?
ズワイガニと並んで、美味しいカニの代表格ですよね。
ところで、実はタラバガニがカニではないことをご存知でしたか?
タラバガニはカニの仲間ではなく、ヤドカリの仲間なんです!
名前に「カニ」がついていて、見た目も味もカニそのものなのに、なぜヤドカリなのでしょうか?
今回は、そんな不思議なタラバガニについて見ていきましょう~
目次
タラバガニの基本情報
■分類:十脚目 異尾下目 ヤドカリ上科 タラバガニ科 タラバガニ属
■大きさ:甲幅25cm程度、脚を広げると1m以上にもなる大型種
■分布:日本では北海道周辺。オホーツク海、ベーリング海、アラスカ沿岸の北極海など。
■生息場所:水深30m~360m。北に行くほど水深が浅くなる。
タラバガニは、水温の低い北の海に生息しています。
タラがよく釣れる場所で、一緒に混ざって漁獲されることが多いことから、この名前がついたと言われています。
国内での漁獲量は非常に少なくなっており、現在市場に流通しているのはほとんどがロシアなどから輸入したものです。
分類に注目してみると、やっぱり「ヤドカリ上科」に属していることがわかりますね!
タラバガニはカニではなくヤドカリ!
「カニの王様」という異名を持つほど、おいしくて重要な水産資源であるタラバガニですが、生物分類学上はカニではありません!
ズワイガニなど一般的な「カニ」は、短尾類(短尾下目)に分類されますが、タラバガニはヤドカリなどが属する異尾類(異尾下目)に分類されます。
でも、タラバガニはヤドカリのように貝殻に身を隠したりはしません。
外見も味も、まごうことなくカニなのに、どうしてヤドカリの仲間といわれるのでしょうか?
カニとヤドカリの違い
そもそもカニとヤドカリの違いとは、一体何なのでしょうか。
カニの仲間である短尾類と、ヤドカリの仲間である異尾類、それぞれの特徴についてご紹介します!
短尾類(カニの仲間)
ズワイガニやガザミなど、多くの「カニ」が属するのがこの分類群で、約4500種が知られています。
腹部は退化していて、甲羅の下に畳み込まれています。
5対(10本)の脚を持ち、第一客は「鉗脚」と呼ばれるハサミになっています。
異尾類(ヤドカリの仲間)
ヤドカリ類のほか、タラバガニなどの一部のカニ型の甲殻類も属する分類群です。
腹部の発達の度合いは種によってまちまちです。
貝殻を背負うヤドカリ類では、発達した腹部は殻の中にしまわれていますが、タラバガニなどのカニ型のものでは、退化した腹部は甲羅の下に畳み込まれています。
短尾類との決定的な違いは、第五脚が退化していることです。そのため、タラバガニの脚はハサミを含めて8本しか見えません。
カニとヤドカリの見分け方
このように、似て非なる短尾類と異尾類ですが、外見上の決定的な違いはやはり脚の数です!
異尾類に属するタラバガニは、第五脚がとても小さく退化して、甲羅の中に隠れています。そのため、パッと見ただけでは脚が8本しかないように見えます。
一方、短尾類に属する、ズワイガニなどの一般的なカニは、脚を10本持っています。
そのため、カニの仲間なのか、ヤドカリの仲間なのかは、脚の本数で明確に区別することができます!
タラバガニに見られるヤドカリ的特徴
脚の本数が普通のカニと違うのはわかったけど、やっぱりタラバガニはヤドカリには見えない…なんて思う方も多いと思います。
でも、よーくタラバガニを観察してみると、確かにヤドカリっぽい特徴をいくつか持っているんです!
メスの腹部が左右非対称
ヤドカリは、腹部を巻貝の中に丸めて畳み込んでいるので、腹部は左側にくるっと曲がった、左右非対称の形をしています。
一方、タラバガニは腹部を甲羅の下に畳み込んでいますが、その形に注目です!
オスの腹部はほとんど左右対称の、きれいな三角形をしていますが…メスの腹部はなんと!丸い形で、体の左側に寄ったように左右非対称なんです。
まるで、貝殻から取り出したヤドカリを、半分に折りたたんだみたいな形ですね。
鉗脚(ハサミ)の節の長さ
カニやヤドカリなど、甲殻類の脚はいくつかの節に分かれており、付け根の部分からそれぞれ順に底節、基節、座節、長節、腕節、前節、指節、という名前が付いています。
このうち問題となるのが、長節と腕節です!
長節は人間の二の腕にあたるような部分、腕節は人間の肘に当たるような部分です。
カニとヤドカリのハサミを見比べると、カニでは長節の方が腕節よりも長く、ヤドカリでは長節よりも腕節の方が長いんです。
タラバガニのハサミを見てみると、長節よりも腕節の方が長いので、やっぱりヤドカリの仲間だということがわかります!
第2触角の形
第2触角は、2対ある触角のうち、外側にある方の触角です。
これがカニではとても短いのですが、ヤドカリでは長く糸状に発達しています。
タラバガニもヤドカリ同様、糸状の長い第2触角を持っているんですよ!
生きたタラバガニを見る機会があれば、ぜひ確認してみてください。
縦に歩くことができる
「カニ歩き」という言葉があるように、カニは一般的には横向きに歩いて移動します。
これは、カニの脚の関節が横向きに折れ曲がる構造になっており、横歩きの方が素早く移動できるからなんです。
ところが、ヤドカリは前や後ろにも移動することができますよね。
実はタラバガニもヤドカリ同様、縦歩きができるんです!
4対の脚を器用に動かして前に進んでいますね…。
タラバガニの他にも!カニみたいなヤドカリ
実はヤドカリの仲間には、タラバガニの他にもカニのような形をしたものがいるんです。
タラバガニ以外には、どんな「カニ型ヤドカリ」がいるんでしょうか?
ハナサキガニ
■分類:十脚目 異尾下目 タラバガニ科 タラバガニ属
■大きさ:甲幅20cm程度
■分布:日本では北海道周辺。オホーツク海など。
ハナサキガニは赤茶色の「カニ型ヤドカリ」(以降は簡単のため「カニ」と呼びます)で、全身が長い棘に覆われています。
獲れる地域が少なく、北海道根室の名物になっています。
味もとっても美味しく、身はもちろんのこと、カニミソが絶品だそうです!
アブラガニ
■分類:十脚目 異尾下目 タラバガニ科 タラバガニ属
■大きさ:甲幅20cm程度
■分布:日本海北部、オホーツク海北部、ベーリング海。
タラバガニのそっくりさんとして名高い「カニ」です。
味はタラバガニより少し劣り、かつては偽装事件などもあったようです。
とはいえ、タラバガニの陰に隠れなければとっても美味しい「カニ」です!
見分け方は、甲羅の中央にある膨らみの上にあるトゲの本数で、タラバガニが6本、アブラガニが4本です。
イバラガニ
■分類:十脚目 異尾下目 タラバガニ科 タラバガニ属
■大きさ:甲幅20cm程度
■分布:房総半島沖、相模湾、駿河湾、遠州灘、紀伊水道、土佐湾、東シナ海。
こちらも甲羅が長く鋭いトゲに覆われた「カニ」です。
とっても珍しく、市場に出回ることは非常に稀で、後述のイバラガニモドキの方がよく流通しています。
カニミソはほとんどありませんが、身がふっくらとしていて美味しいです。
イバラガニモドキ
■分類:十脚目 異尾下目 タラバガニ科 タラバガニ属
■大きさ:甲幅22cm程度
■分布:ベーリング海、オホーツク海、太平洋。
イバラガニに似ていることから名付けられた「カニ」です。
イバラガニよりも少し大型で、強い甘みがあって味もよく、流通量も少なくありません。
まとめ
いかがでしたか?
今までカニだと思って食べていたものが、実はヤドカリの仲間だったなんて、衝撃的ですよね…。
市場や水族館で、タラバガニなどの「カニ型ヤドカリ」を見かける機会があったら、ぜひ形や顔を観察して、ヤドカリの面影を探してみてはいかがでしょうか!
それでは、素敵なお魚ライフを~
子供の頃から魚が大好きな女子大生。好きな魚はヒラスズキ。「見てかわいい、釣って楽しい、食べて美味しい」という最強のコンテンツであるお魚の魅力を、私なりの視点で発信していけたらと思います!