こんにちは!お魚大好き女子大生の鈴木ひらです。
突然ですが、ニジマスはお好きですか?
川釣りをされる方には、特に人気の高いお魚ですよね!
実はこのニジマス、外来種だということをご存知でしたか?
名前も日本語っぽいですし、馴染み深いお魚なので驚かれた方も多いかもしれません。
今回はそんなニジマスについて、特徴から法律上での扱い、生態系に及ぼす影響まで見ていきましょう~!
目次
ニジマスの基本情報
■分 類:サケ目サケ科サケ属
■大きさ:40cmほどのものが多いが、大きいものは90cm前後にもなる
■生息域:夏でも水温の低い淡水域
■分 布:本来の分布域はカムチャツカ半島から北アメリカ大陸西岸、メキシコ北西部の一部まで
サケの仲間で、食用魚として養殖されるほか、釣りの対象としても人気のお魚です。
管理釣り場などに放流されたり、「ご当地サーモン」として地域独自の方法で養殖されたりと、全国で観光資源としても重宝されています。
身は柔らかく、生食や塩焼きではもちろん、ムニエルなどの洋風料理にしても美味しいです!
外来種としてのニジマス
ニジマスはいつ、どこから日本に入って来た?
ニジマスの本来の分布域は、北アメリカやメキシコの西海岸です。
日本には、明治時代の1877年に、アメリカのカリフォルニア州から養殖目的で導入されました。
そこから100年以上の年月をかけ、日本、特に北海道の自然水系にゆっくりと定着していったと言われています。
1925年に移入したブラックバスや、1960年に移入したブルーギルなどに比べ、移入時期がかなり昔ということもあり、他の外来魚よりも「外来種」というイメージが浸透していないようですね。
日本のニジマスが生態系や在来種に与える影響
自然水系にも定着して、今やすっかり身近な存在になったニジマス。
生態系への影響といっても、そんなに大きくはないんじゃないの?なんて思うかもしれません。
でも、実はそうでもないんです。
ニジマスは「世界の侵略的外来種ワースト100」、「日本の侵略的外来種ワースト100」という二つのリストに名を連ねている魚です。
日本では、特に北海道で問題になっています。
具体的には、北海道の在来種であるオショロコマという魚が、生息域を奪われるなどの問題が生じています。オショロコマは現在絶滅危惧種にも指定されています。
他にも、在来種のヤマメなどを駆逐したり、産卵時期が重複するイトウなどの産卵床を掘り返してしまい、繁殖を妨げてしまうといった問題が報告されています。
勝手に日本に連れてこられたニジマスに罪はないのですが、残念ながら決して人畜無害なお魚ではないんですね…。
指定外来種?侵略的外来種?ニジマスを取り巻く法律
生き物が好きな方なら、絶対に耳にしたことがあるであろう「特定外来生物」という言葉がありますよね。
実はニジマスはこれには指定されていません!
一方で、「生態系被害防止外来種」や「侵略的外来生物」には指定されています。
他にも、北海道の指定外来種にかつて指定されていた、という話も聞いたことがあるかもしれません。
……とても紛らわしくて混乱しますね!
結局ニジマスは何に指定されていて、それにはどんな意味があるのか?
そもそも、それぞれの法律は何が違うのか?
そんなことをまとめてみました!
名前 | どこが定めているか | ニジマス の指定 | どんな内容か |
---|---|---|---|
特定外来生物 | 日本政府が定める 「外来生物法」 (正式名称:「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」) | × | ・生態系や人間活動への被害が問題となる海外起源の外来生物を指定し、その飼養、栽培、保管、運搬、輸入等を規制することで防除を行います。 |
生態系被害防止外来種 | 日本政府が定める 「外来生物法」 (正式名称:「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」) | ○ | ・2015年までは「要注意外来生物」と呼ばれていました。 ・侵略性が高く、生態系や人間活動に被害を及ぼす、またはその恐れのある外来種について、特定外来生物に指定されていないものまで幅広く選定したもの。海外起源だけでなく、国内由来の外来種も対象となります。 ・ニジマスはこの中でも「適切な管理が必要な産業上重要な外来種(産業管理外来種)」という区分に指定されます。 ・外来種に関する啓蒙や適切な行動の呼びかけなど、外来種対策の進展を目的としたもので、規制の対象にはなりません。 |
侵略的外来生物 | 国際自然保護連合(IUCN)/ 日本生態学会 | ○ | ・生態系や人間活動に被害を及ぼす恐れのある外来種。国内由来の外来種も対象となります。 ・このうち特に影響が大きく優先的に取り扱うべき種を、IUCNが「世界の侵略的外来種ワースト100」、日本生態学会が「日本の侵略的外来種ワースト100」として選定しており、ニジマスはどちらのリストにも載っています。 ・外来種に関する啓蒙や適切な行動の呼びかけなど、外来種対策の進展を目的としたもので、規制の対象にはなりません。 |
指定外来生物 | 北海道 | × (2015年に廃止) | ・北海道の生態系に著しい影響を及ぼす、またはその恐れのある外来種を指定したもの。 ・適切な飼養の要請や野外に放つことの禁止、販売業者の説明義務といった規制を設けています。 |
こうして見ていくと、ニジマスの侵略性が問題視されているものの、具体的な規制や罰則はあまり設けられていませんね。
規制対象から外れている理由としては、観光資源などとして産業的に重要であることや、長い年月をかけてすでに定着してしまった水系があること、一方で冷水域を好む魚なので本州以南の河川には定着しにくい、といったことが考えられます。
ニジマスの放流は危険?
このように、近年「危険な外来種」という認識が高まってきたニジマスですが、一方で放流などに具体的な規制が設けられていない、という矛盾があります。
最近でも、群馬県太田市がニジマス1000匹を川に放流したところ、生態系へ悪影響があるとして大きく非難されてしまったニュースがありました。
規制がないからと言って、むやみに放流して良いわけではありません。
しかし、重要な観光資源であり、地域の産業を活気づけてくれる魚であることも事実です。
個人的な考えでは、すでにニジマスが完全に定着してしまっている河川への放流は、認められてもいいんじゃないかと思います。
養殖や管理釣り場の経営など、その河川に生息するニジマスで生計を立てている方も多くいらっしゃるからです。
一方で、そうでない河川にニジマスを放流する際には、
- ニジマスに捕食されて駆逐される恐れのある在来種
- ニジマスとの競合により生息域を奪われる恐れのある在来種
- ニジマスとの産卵期の重複により繁殖が阻害される恐れのある在来種
がいないことを事前に検討・確認する必要があるのではないかと思います。
また、ニジマスが放流先の水系から、他の水系に侵入する恐れがないかどうかも、事前に確認するべきだと考えます。
ニジマスの放流は、生態系や在来種に悪影響がないことを、十分に検討することが大切ですね!
まとめ
ニジマスには危険な外来種としての側面と、身近で産業的にも重要な魚としての側面の両方がありましたね。
どう取り扱うべきかは、とても難しい問題になってきます。
外来種問題に歯止めがかからない理由の一つとして、私たちの知識不足が挙げられます。
この記事を通して、皆さんにニジマスや外来種について少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです!
それでは、素敵なお魚ライフを~!
子供の頃から魚が大好きな女子大生。好きな魚はヒラスズキ。「見てかわいい、釣って楽しい、食べて美味しい」という最強のコンテンツであるお魚の魅力を、私なりの視点で発信していけたらと思います!