【後編】水産業の未来を担う、現役水産学部生に迫る!~海を、魚を知る旅~

みなさんこんにちは!
生まれも育ちも海なし県、現在山の中で農学を学ぶ現役大学生のミユウです。
そんな私が、今まで触れる機会がほぼなかった「海」のこと、「魚」のことを知るために、奔走する過程をお伝えしていくものです!

2回目は、初回の後編、現役水産学部のいかちゃんの核心に迫ります。これからの水産業を担う若者の考えとはいかに...!?

【前編】未来の水産業を担う現役水産学部生に迫る~海を、魚を知る旅~
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本日のゲスト

ニックネーム:いかちゃん。
大学:北海道大学 水産学部 海洋生物科学科。
出身:新潟県
好きな魚:スルメイカ

その地域の魚がおいしいのには、理由があることを知ってほしい。

いかちゃん

水産業界は資源の枯渇を始め、課題多き分野だから、そこの課題を解決したい。
課題の解決には、色んな関わり方があるけど、”生き物の解明をすること”それが、私にできることってそこだと思う。

研究では各地の資源の変動を出すとことが最低ラインだけど、そこで終わりではなく、地域の課題解決まで結びつけたいと思ってて。

例えば、富山県で美味しいぶりが採れることには理由がある。
他の海よりも、富山県のぶりが採れる地点は、塩分濃度が他地域の3.4に比べて、3.3と低くなっているの。

これは、栄養塩を含む地下水が流れ込んでいるから。
それによってプランクトンが脂肪を蓄えて太る。
それを食べるぶりにも脂肪がのっておいしくなる。

こんな風に、何らかの環境的な要因などがあって、地域でおいしいと言われている魚には理由があるんだ。でも「〇〇産だから」「鮮度が高いから」おいしいって判断され、おいしい理由まではあまり知られていないのが現状。

だから、その地域の魚はなぜおいしいのかを、魚目線でなんで美味しいのかを伝えていきたい。
そしたら、その地域の魚を大事にしようって動きが生まれてくると思うんだ。
今は、美味しい魚は、どの地域でもお金になるから誰しもが採ろうとする。
でも、”その地域でとれる魚だから特別においしい”って具合に、この地域でおいしい魚がとれる要因が解明されれば、その地域のこの魚は大切にしようって流れが生まれると思うんだよね。
そうしたら、平和的に資源を大切にできるのかなって。

課題解決意識はあるけど、現場にいくと、現場の人の生活があって、そことの折り合いって難しい。
だから、自然においしい魚を守ろうって流れができたら、みんな堅苦しくなく資源管理ができると思う。
自然な流れとして、おいしい魚を守ろうという視点から資源管理ができたらステキだなって思うから、そんなきっかけになるような研究ができたらいいなって。

いかちゃんの思いが、真っ直ぐ、熱く届いた瞬間だった。
世界を優しく、そして着実に、熱く真っ直ぐに見るいかちゃんらしい思い。
「なぜその魚はおいしいのか。」
それは、ほとんどの場合隠れてしまう。

消費者が魚を購入する時に、その情報を知っている人は一体何%だろうか。つくる責任 つかう責任。
消費者である私たちの嗜好に合わせて供給は変わっていく。
どんな情報を取り入れ、何を選択するのかが、世界を作っていく。
だからこそ、消費者である私たちが、まずは知ろうとしなければ。
一方で、知れる環境が整っていない面もあるのかもしれない。

いかちゃんの目指す研究は、それを実現できる可能性を秘めている。

いつかは、魚の原籍を探しにいく旅へ

いかちゃんの「人生のうちでやってみたいこと」がなかなかに面白い。

いかちゃん

「最初は地元の水産試験場とかで研究したいって思っているんだけど、そこでの研究のデータの扱い方とかがわかったら、全国の水産試験場を渡り歩いてもデータが何を示しているのかがわかるはずだから、全国の魚のゲンセキを探しにしく旅がしたいなって。この地域はこうだから魚がおいしいんだってことがわかったら、私の知らないおいしい魚のことも知れるし、その地域も頑張ってその魚をピックアップしてくれたら、新潟にいてもおいしい魚が食べられるような世界になればいいなって。」

農業と漁業

いかちゃん

インタビュー中時々出てきたのが、農業と漁業の繋がりと相違点。
漁業は、自然との対峙。養殖以外は、私たちが海の資源を生み出すことはできない。
だからこそ、海で起きていること・魚の起こっていることを知ることが必要で、いかちゃんの研究室はまさにここに直結してくる。
一方の農業は、管理から始まるのがほとんど。
資源は、農業は完全な自然の中には存在しない。種を播き、栽培する。いかに効率よく管理できるかが、農業のメインだ。
管理のために生理学を学び、それに必要な条件を作るために、土壌環境や障害となる病害虫について学ぶ。
同じ一次産業で抱える課題には共通する点も多々ある一方で、違いもたくさんある。

「日本の水産に対する対処はよろしくないかな。そもそもが、資源を枯渇させるような制度になってしまっているよね。漁師さんも、資源を枯渇させたくて、漁をしているわけではないけど、制度的にたくさん採らないと、たくさん採らないと他の人がたくさんとっちゃうから、競争的に経済がまわっているよね。資本主義だからしょうがないのかもしれないけど。その理論が展開される時点で、採りすぎになることは明らかだよね。ノルウェーの例がよくでてくるだけど、ノルウェーには、完全に資源を守るための枠があって、等分に分散される仕組みがあれば採り過ぎを防げるし、守るためのルールがしっかりしている。日本は、それが遅れているかも。それを解決しないと、資源の枯渇に繋がるよね。トップダウンで国がルールを決めれればいいけど、現状はあまり期待できないから、ボトムアップでどうすればいいのか、難しいけれど必要だよね。」


フィッシャーマンジャパンのインターンを超えて


そもそものきっかけとして、私といかちゃんは、2020年春に宮城県石巻市のフィッシャーマンジャパンの一ヶ月インターンを通して出会った。
1年経った今だからこそ、その時の経験や吸収してきたことが活きてきた。
あのとき、いかちゃんは何を吸収したのだろう。

いかちゃん

「インターンにいく前から、講義を通して、水産にはたくさんのおもしろい部分もがある一方で、課題も多き分野であることを学んでいたから、課題を解決できるような人材にならなきゃなって思っていたんだ。
どうしたら、課題を解決できる人材になれるかにヒントが欲しくてインターンに参加したんだけど、インターン後はそんなに気張らなくていいなって思ったんだよね。
こんなにも水産業界に対して色んなアプローチの仕方があるってことを知ったし、研究だけじゃなくて、色んなやり方があることも知った。
私には持っていないステキものを持っている人たちが、水産業の課題を解決しようとしてくださっていること感じたから、私だけで全部それを解決しようと思いすぎず、自分ができる分野から関わればいいって気づけたんだ。
例えば、「こういう課題を解決しよう」って発信するのは、私がやるよりも、フィッシャーマンジャパンを始め、それが得意な人がやる方が何倍も効果的。
私は、研究をしていく中で「こういうこともできるかも」って提案するだけでも全然違うのかなって思えたんだ。
だから自分だけじゃなくて、こんなにすごい人たちがたくさんいるんだから、そういう人たちと共に、私は私なりに働きかけができれば、加速度的に課題解決ができるのかなって思えるようになったんだよね。」

こんなにも、魅力的にわくわくしながら、水産を語れる若者がいる。それだけでも水産業の明るい未来へのポテンシャルがあると感じた。

最後に

いかちゃんとの対談の中で、私は海や水産の世界の蓋を開けたら、まだまだ知らないことがたくさん詰まっていることを実感した。
面白い要素が多分たくさん詰まっている。
何より、異分野の水産学部生が描いている未来・視点は面白い。
もっと探ってみよう、ということで次回も潜水を続けていきます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。