【前編】未来の水産業を担う現役水産学部生に迫る~海を、魚を知る旅~

みなさん初めまして!
生まれも育ちも海なし県、現在山の中で農学を学ぶ現役大学生のミユウです。
この記事は、海なし県で生まれ育った私が、今まで触れる機会がほぼなかった「海」のこと、「魚」のことを知るために、奔走する過程をお伝えしていくものです!

初回はどこから手をつけるべきか、考えあぐねた結果「そうだ、ツテを使おう」ということで、2020年2月から同じ時期に1ヶ月間のフィッシャーマンジャパンのインターンシップに参加した北海道大学水産学部のいかちゃんに、お話を聞くところから始めてみることにしました。

これからの水産業を担う若者の考えとはいかに...!?

本日のゲスト

ニックネーム:いかちゃん。
大学:北海道大学 水産学部 海洋生物科学科。
出身:新潟県
好きな魚:スルメイカ

なぜ水産の世界に飛び込んだのか?

いかちゃん

水産に興味をもったのは、大学で水産の講義を受けてからなんだよね。

正直衝撃的だった。出会った当初のいかちゃんの印象は、さかなクンならず”さかなチャン”のような超お魚好きの大学生のようだったから。

しかし、海なし県の私には、「生物が好きだから研究をしたい。では、水産学部へ行こう」という発想には及びにくい。なぜ、いかちゃんは、生物好きから水産に辿り着いたのだろうか。

いかちゃん

水産に興味をもったのは、大学で水産の講義を受けてからなんだよね。
本当は、農学部に行きたかったんだ。生き物が好きってのもあるけど、環境問題の授業を小中学校で受けて、”生き物と人間がもっと共存できるような世界になってほしい”と思うようになって。
中学生に頃から、そういう研究をしてみたい思っていたんだよね。
生態系を維持していくにはどうしたらいいのかを学ぶために北大の農学部に志すようになったんだけど、少しレベルが高かった。そんな時、水産学部からでも生態系を学べることはできるし、海の環境と人間の共存を考えることもできることに気づいて。しかも水産はまだまだ解明されていないことが多そうだなと思ってから、関心が海の方へ寄っていったんだよね。

生物好きであること、環境問題への関心、課題解決意識の強さ、さらに人間と生物の共存を願ういかちゃんが水産学部へ進んだのは、自然な流れだったのかもしれない。

水産学部って、面白い。

いかちゃん

水産っておもしろいんだよ。一度、みんなに水産の授業を受けてほしいくらい。(笑)

しかし、実際に水産学部では何を学んでいるのか、いまいちイメージができなかった。
おいしい魚の裁き方?魚の解剖?実習は船に乗ることだろうか・・・。
海なし県のハンデがあってか、海まわりのことを考えることが難しい。

そこで、「水産学部で学んできたことは?」と質問を投げてみることに。

いかちゃん

2年生は、海洋生物科学科・海洋資源科学科・増殖生命科学科・資源機能化学科の4つの学科の先生たちがオムニバス方式で授業をするんだけど、物理現象に基づいた海の流れや、漁獲探知機による魚の見つけ方などの技術面、生理学の観点からどうしたらおいしい鮭になるか、資源動態に注目した生物学、成分の変化からどう味覚として認知されるかの化学など、幅広く学んだよ。
海の生物は私たちの常識とは違うところを住んでいるから、すぐそこの浜辺にいるようなヤドカリやイソギンチャクでさえわかっていないことが多いんだ。
ベントス(水底で生活する生物)のうちその7割くらいは生き方を含めて解明されていない生物ばっかりで、だからおもしろいんだ。

やはり、水産業の学びの幅は広い。広すぎる。
海の流れを見る視点から始まり、魚の成分とおいしさとの関係性まで幅広い。

前提として大きく異なるのは、農業は、人間が種を植え、栽培し、収穫する。
その過程では、自然の流れに委ねている点も多いが、基本的には人間の管理下で起きる現象だ。

一方、水産の場では、養殖を除いて、直接的には人間とは別の次元で起きている自然現象の中に人が入って行く。
管理できる範囲はほんの一部に過ぎない。海は広く深い。

そんな学びを深めた先に、何が見えるのだろうか。より専門性の高い、研究室のことを聞いてみたくなった。

通称漁場と呼ばれるフィールド系研究室へ

専門性が高まる3年次。
通称漁場と呼ばれるほど、現場よりの研究室を選らんだ、いかちゃん。授業の様子はつかめてきたが、専門性が高い研究室ではどんなことが展開されているのだろうか。

いかちゃん

研究室では、その資源がどういう風に変動しているかに着目して色んな研究をしているよ
例えば、陸奥湾のマダラの資源崩壊がなぜ起こるのかを研究している先輩がいるんだけど、夏以降に陸奥湾のマダラ稚魚は、餌の枯渇によって水理環境が過酷になって、7月以降に稚魚が全然捕れなくなったんだ。
だけど、陸奥湾の近くにいる同じ陸奥湾出身のマダラだけど、生き残っていて。
そこから、夏以降までに陸奥湾でうまく海流に乗って、陸奥湾から輸送されないと死んじゃうことがわかったんだ。
それによって、マダラが採れない時を予測できるようになったの。
たくさん採れるっていう予測はできないけれど、その海流が来なかった年は、今年はマダラは採れないって具合に!
あとはマコガレイ!水温によってカレイが水深が深いところで生まれて、どんどん水深の浅い方に移動していくんだけど、シャコは4月とか月によって、その場所に生息するんだけど、マコガレイの水温とシャコの月が合致すると、マコガレイが補食されて少なくなることがわかったの。
資源がどういう要因で減っているかを研究によって、人間に改善できる部分もわかるんだ
漁の適期とかね。
あとは、その生物が増加する時期は、繁殖に関わるんだけど、それは栄養状態に関係するんだ。
よく、産卵期に集まってくる魚を捕るんだけど、それは産卵期以降は魚の脂肪が低下してしまうんだ。
その前のおいしい時期に採るから魚が美味しいんだ。
そういう生物の生活史にも密接に関わってくるから、どの時期においしいかもわかるんだ。だからその時期だから採った方がいいって分かる。
その面から、漁業の在り方、効率的な漁業を考えることに繋がると思うんだ。
私はまだ研究内容が決定していないんだけど、スルメイカの研究をしそうな気がする。
通称漁場って言われるくらい、現場よりの研究室なんだ。船にのって、地点にいって、水利環境と対象生物のサンプルとる。
そうやって、今までの先輩のデータの蓄積があるから、研究には一年しかないからできることは限られてくるけど、できることはたくさんあるかなって思う。

それが私なりの解釈、といかちゃん。

今回、分かった魚と海のこと。それは、水産が学問として、どのように展開されているのか。どんなことを考えている学生が、それを専攻するのかということ。どこまでも海は広く、まだまだ深い。そして、どこまでも面白い。
とりあえず、ファインディング・ニモを見たくなったのは、私だけだろうか…。

後編に続く。次回【いかちゃんのコアな本心に迫る!】

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