【ソボクなギモン】淡水魚と海水魚の違いは?同じ水には棲めないの?

こんにちは!お魚大好き女子大生の鈴木ひらです。

みなさん、海水魚と淡水魚の違いについて疑問を持ったことはありませんか?
例えば、金魚は淡水に棲む魚で、鯛は海水に棲む魚ですよね。
金魚は海で、鯛は川では生きていけません。
でも、それは一体なぜなんでしょうか?

今回は、そんな知っているようで知らない、素朴な疑問について掘り下げていきます!

なぜ水が違うと生きられないの?

海水と淡水の決定的な違いは、なんと言っても塩分です。

淡水魚と海水魚の体液の塩分は、(少し組成は違いますが)いずれも川の水よりも濃く、海水よりも薄いです。
その証拠に、アユの身は味が薄くて、マグロの身は塩辛い!なんてことはないですよね。

つまり、淡水魚は自分の体液よりも塩分の薄い水の中で、海水魚は自分の体液よりも塩分の濃い水の中で暮らしている、ということになります。

これは一見、なんでもないことのように思えますが、実は結構大変なことなんです!
それは、魚が常に「浸透圧」の影響を受けているからなんです。

それでは、まずは浸透圧とは何なのかを見ていきましょう!

浸透圧とは

まず、この世のあらゆる物質は、均一な濃度になるように動く性質があります(これを拡散の原理と言います)。
例えば、水の入ったコップの中に、赤いインクを一滴垂らした時のことを想像してみてください。
インクはコップの中ですぐに広がり、やがて時間が経つと、水全体が薄い赤色になりますよね。
これは、インクの濃度が水の中で均一になろうとするためです。

この現象は、塩分の違う水どうしが触れ合った時にも起こります。
塩分の薄い水と濃い水が隣合ったら、だんだん混ざり合い、全体で同じ濃度の水になろうとしますね。
同様に、魚の体液と周囲の水も、均一な濃度になろうとするんです!

「でも、魚の体液は皮膚や鱗に覆われているから、混ざり合わないんじゃない?」と思うかもしれません。
ここで問題になってくるのが、魚の体表の性質なんです。

生き物の細胞を覆う膜(生体膜)は、水分子は通り抜けることができても、塩類などは通り抜けられない半透性という性質を持っています。
生体膜を挟んで塩分の薄い水と濃い水があったら、何が起こるでしょうか?
答えは、水分子だけが生体膜を通過できるので、塩分の薄い水の水分子が、塩分の濃い水の方に移動することで、全体で均一な濃度になろうとします。
このようにして、水分子が生体膜を浸透しようとする圧力のことを、浸透圧と言います。

魚の体表も、生体膜でできています。
ですから淡水魚の場合、周囲の水が体内にどんどん浸み込んで入ってきてしまいます
海水魚の場合、体液中の水がどんどん外に浸み出て行ってしまいます

でも実際には、川魚は水ぶくれになっていないし、海の魚はカラカラに干からびていませんよね。
これは、魚たちが浸透圧調節を行っているからなんです!

魚の浸透圧調節

魚も人も、生き物は皆、体液の濃度を一定に保とうとする性質を持っています。
体液の塩分が薄すぎても濃すぎても、細胞がうまく機能してくれないからです。

そのため、魚は周囲の水によって体液の濃度が変わってしまわないよう、浸透圧調節を行っているんです。

淡水魚の浸透圧調節

体液よりも塩分の薄い水の中で暮らす淡水魚は、常に体内に水が入ってきてしまう環境にいます。
そのため、積極的に水を体外に排出し、塩類を体内に取り込むようにしています。

①口から淡水を飲まない
②食べたものに含まれる塩類を腸から吸収する
③腎臓で塩類を再吸収し、塩分の薄い尿をたくさん排出する
④水中に含まれるわずかな塩類をエラから吸収する

海水魚の浸透圧調節

体液よりも塩分の濃い水の中で暮らす海水魚は、常に体外に水が出て行ってしまう環境にいます。
そのため、積極的に水を体内に取り込み、塩類を体外に排出するようにしています。

①海水をたくさん飲む
②腸では塩類も水もどちらも取り込む
③腎臓で塩類を排出し、塩分の濃い尿を少量だけ排出する
④体内の過剰な塩類をエラから排出する

サメやエイの浸透圧調節

一方で、サメやエイなどの海に棲む軟骨魚類は、ちょっと変わった浸透圧調節をしています。
それは、体液中に多量の尿素を溜め込む、という作戦です。

尿素は塩類と同様、生体膜を通過することができません。
そのため、体液中に溶かすことで、浸透圧を海水と同じにできてしまうんです!

「サメやエイの肉はアンモニア臭がする」という話を聞いたことがありませんか?
これは実は、体液中の尿素が分解されて発生した匂いなんです。

本来なら尿として排出してしまう尿素を、浸透圧調節のために有効利用するなんて、なかなか頭のいい方法ですよね!

塩分変化に対応できる魚、できない魚

ここまで見てきて、「あれ?」と疑問に思った方もいるかも知れません。
そう、魚の中には、一生のうちに川と海を移動する、ウナギやサケのような回遊魚もいますよね。

実はこのような回遊魚や、塩分変化の激しい汽水域に生息するスズキやボラなどの魚は、周囲の水の塩分に合わせて、浸透圧調節の方法を切り替えることができるんです!
こういった幅広い塩分に適応出来る魚のことを、広塩性の魚と呼びます。

一方で、コイやアジなどの魚は、淡水から海水、あるいは海水から淡水に移すと、塩分の変化に対応できずに死んでしまいます。
こういった狭い範囲の塩分にしか適応できない魚は、狭塩性の魚と呼ばれています。

塩分への適応は、魚の種類や生態によって違うんですね~。

淡水魚と海水魚は一緒に棲めないの?

ここまで見ていくと、淡水魚と海水魚が同じ環境で生きていくのは難しいように思えます。
しかし、淡水魚と海水魚が一緒に住める、魔法のような水が存在するんです!
それが、岡山理科大学の山本俊政准教授によって開発された「好適環境水」です。

好適環境水は、海水中に含まれる塩類の中から、魚にとって必要なものだけを厳選し、魚の体液に近い濃度に調節した人工飼育水です。
そのため、海水魚と淡水魚、どちらも快適に過ごすことができるんです。

さらに、好適環境水で飼育した方が成長速度が速くなる、という報告も出ています。
これは、本来であれば必要な浸透圧調節を行わなくて良くなり、その分のエネルギーを成長に回すことができるからだと言われています。
このことから、養殖業界からの注目も集めているんですよ~。

まとめ

海水魚と淡水魚の浸透圧調節の違いについてでした。
どちらも、それぞれの環境に合った体の仕組みを持っているんですね!

それでは、素敵なお魚ライフを~

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